大型で強い台風19号は日本列島の広範囲に強風を吹かせ、大雨を降らせた。千曲川や多摩川といった1級河川などが氾濫し、濁流で民家や周辺道路が冠水した。
多くの死傷者や行方不明者も出ている。洪水で孤立したままの住民の姿もある。まず救命、救出活動や復旧作業に全力を尽くしてほしい。
千葉県内などに大きな被害をもたらした台風15号の復旧作業さえ進まぬ中での被災である。毎年のように雨風による被災が続いており、改めて自然の猛威の恐ろしさを知る。明らかに台風の大型化、凶暴化は進んでおり、被害は深刻化している。この傾向は今後も続くのだろう。
国や自治体は、これに対処すべく、河川の管理を含む真の国土強靱(きょうじん)化を急がなくてはならない。企業や学校もそれぞれの備えに万全を期し、各家庭も居住地の特性を把握し、平素から災害への対応を話し合っておく必要がある。
台風19号で気象庁は9日、いち早く会見を開き「最大級の警戒」を呼びかけていた。接近、上陸に伴っては、広範囲な自治体に向けて大雨特別警報を発表した。大雨・洪水の警戒レベルで最高の5に相当し、最大級の避難を求めたものである。多くの自治体は避難所の開設を早め、職員らが対応にあたった。十分ではないが、過去の教訓は徐々に生かされている。
鉄道をはじめとする交通機関はいち早く計画運休を発表し、混乱を最小限に抑えた。ただしこれは、通勤通学客が少ない週末だったためでもある。
平日の混乱を防ぐためには、交通事業者任せではなく企業や学校が計画休業、計画休校で協力する必要がある。それが社員や顧客、生徒を守ることにもつながる。安全重視こそが時代に求められた課題である。
週末の多くのイベントも早めに中止の決定が下された。開催中のラグビーのワールドカップも、3試合が中止となった。岩手県の釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムで行われるはずだったナミビア-カナダ戦がその一つである。
東日本大震災で被災し、復興の夢を背負って新設された競技場の晴れ舞台に、ボランティアを含む多くの市民が努力を重ねてきた。中止の決定はやむを得ないが、ラグビー界は何らかの代案を練り、釜石の思いに応えてほしい。